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ネタバレ 部屋

主に映画のネタバレと感想を好きなように書くブログです。

サウルの息子 SAUL FIA/SON OF SAUL(2015) ネタバレ

 

 

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2015年カンヌ映画祭でグランプリ、2016年アカデミー賞外国語映画賞。肩書に不足なし。4月現在で、私の中で今年最高の映画です。

私はハッピーエンドだと思ったのだな。だってさ、主人公の願いが叶ったんだから。

でも、それは飽くまで極限の環境下でのハッピーエンド。

人類史の汚点であるホロコーストの現実をまざまざと見せつけると同時、われわれに再度人とは何かを考えさせる。絶対に今観るべき一本。

 

以下、ネタバレ

ネタバレと言っても大きなイベントがないお話しなので、簡略化して書きます。

 

主人公サウルはハンガリー出身のユダヤ人。ゾンダーコマンド(アウシュビッツ収容所にて殺害された犠牲者の死体や着衣を始末することを任務とする特殊部隊。後に抹殺される運命。)として働いている。

ある日、ガス室の掃除中、死にきれず倒れている少年がいた。

ガス室の外にだされ、とどめを刺される。サウルは、その少年を自分の息子だと言い、遺体をユダヤ教にならった土葬で弔ってあげようとする。

遺体の解剖室のゾンダーコマンドの計らいで遺体を手に入れる。

弔いにはユダヤ教のラビ(牧師のようなもの)が必要で、他の班に潜入し探すが失敗する。

ひょんなとこから殺害されるために搬送されてきたユダヤ人の群衆の中からラビ(?)を見つけ、ゾンダーコマンドと為りすまさせ生かす。

あとは、土葬して弔うだけ。しかし、ゾンダーコマンド内で計画していた蜂起がとある拍子に起こる。息子の遺体を担いでどさくさに紛れ収容所から逃げ出すサウルとラビ。

森の中で弔いをしようとするが、追っ手にビビりラビが逃げ出す。サウルも後を追うが、川を渡る際に誤って遺体を手放してしまう。遺体は川を流れていく。

川を渡り切り助かるもしょぼくれるサウル。合流した仲間たちと、森の中に見つけた小屋で一休みしていると、入り口に少年の姿を認める。

その少年を見つめ、笑顔を見せるサウル。立ち去る少年。

追ってきたナチス軍に見つかり、サウル達は銃殺されるのであった。

 

感想

終始、サウルを中心にしたカメラワークで、背景は絞りがきつくぼやけている。情報量が少ないが、悲鳴や銃声、ガス室を叩く音、ボヤけながらも確認できる遺体の山などから、惨状を想像させることに成功している。実際に、全体像が見えなくても、心理的にかなりきつかった。

 

サウルは少年を弔うことに奔走するが、その少年が本当の息子かどうかはわからない。

サウルは、本妻の息子ではなく外で作ったと言うが、歯切れが悪く仲間の追及に言葉詰まることが多い。それに、息子の死を目の当たりにしてもやけに冷静ですし。

・・・というか、この物語、その少年が息子かどうかなんてどうでも良いことなのだ。

この物語の本髄は、息子を弔うことではなく、人を人として弔うことで自分もまた人であろうとする、ということなのだと解釈した。

命令とはいえ自分の同胞を虐殺することに加担し、自分も殺されるのを待っている。そんな極限の状態で、人は人でいられるはずがない。

だから、サウルは息子と見立てた少年をユダヤ教にならって埋葬することで、自らの人間性を保とうとしたのだと思う。

ラスト、小屋に顔を見せる少年を見て、涙を浮かべた笑顔を見せる。きっと、埋葬しようとした子の幽霊が会いに来たと思ったのだろう。

自分の想いが通じ、弔った息子(?)の霊が会いに来た。直後、サウルはナチス軍に殺害されるが、(サウル自身の主観になるが)人間性を保てたまま死を迎えられた。きっと、本望であったろう。

 

と、この環境下では確実にハッピーエンドだと私は言い切る。

だがしかし、人が自らに人間性を感じられない状況は決して正しくない!

戦争なんてなければサウルはきっともっと幸せだったよぉ。人間性を追い求めるなんて考える必要ないほど人間らしく生きていたよぉ。ううう。

人間らしく生きていられる私は本当に幸せだな。もっとちゃんと生きなければ。

 

 

その他の特筆

冒頭のサウル登場で痺れる。

サウルの顔つきの人間味のなさ。

バードマンよりこっちの長回しの方が好い。

登場人物の顔と名前が一致せずに終了。